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高齢者のための部屋を増築

2017年02月27日

親世帯が建てた家。

親世帯は将来子世帯が帰って来た時の自分たちの居場所として、リビングダイニングに近い所に和室の隠居部屋を準備していた。15年ほどして子世帯が孫を連れて帰って同居が始まったが、孫が3人に増え、もともとのリビングダイニングが手狭になってきた。そして徐々に隠居スペースを浸食していくことになった。

さらに子世帯の提案による薪ストーブの導入とそれに伴う簡単なリフォームが行ない、暖房面積を大きく取るために隠居スペースとリビングダイニングを分けていたドアと壁を撤去し、ひとつなぎになった。それでも親世帯は始めは孫との距離も縮み一体感を楽しんでいたようだったが、孫たちは成長につれ友だちが出来、家に連れて来るようになる。そうすると一つなぎになってしまった隠居スペースに無遠慮に入っては大騒ぎをしする。

 

そんな中、母親の病気が進行し自由に動くことが困難になってしまった。自分で出掛けることが出来ないので誰かが連れ出さない限り一日中家で座っていることになる。そこで子供たちに騒がれると、寝室に避難しなくてはいけなくなる。せっかく自分のスペースとしてつくった場所なのに少しも落ち着くことができない。

 

病気の進行とともに既存の生活動線の悪さ、反バリアフリーな家の造りが浮かび上がってきた。トイレに行くのに引戸一枚開き戸2枚開けなくてはいけない。連続した手摺はつけられない、床に24㎜の段差がある、など、不自由な体ではいつ転んでもおかしくない状況。普通の生活=危険な状態になってきた。ひとたび転んで骨折でもしたら取り返しの付かないことになる場合がある。

そのような理由でさらに隠居を増築することとなった。もともと60坪を越える家で十分な広さがある上に増築というのは些かもったいないような気もしたが、気づけば8人住まいとなっており、田舎特有の二間続きなど使えない部分もあったりして、この際「高齢者の為の空間」ということに特化た計画で課題を一気に解決することになった。

当初の家の計画では、まさか増築が必要になるなんてことは想像もしていなかったことだと思います。生活の変化への想像力と対応力、住み継がれる家を設計するにあたっての大きな課題であるように感じます。

 

伊藤 晋一郎

一級建築士設計事務所 株式会社 有理社

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